2008.11.16 Sunday
CHANGE
みなさん、こんにちは。
今月の初旬に、アメリカで史上初の黒人大統領が誕生しました。自由と平等を掲げながらも、ほんの40年ちょっと前まで、法制度のレベルで露骨な人種差別が存在し、現在もあらゆる場面でそれが色濃く残る世界一の超大国で、マイノリティーの国家元首が誕生した意義は、どれほど強調しても強調し過ぎということはないでしょう。
あえて、少し旬を過ぎた感のあるこの時期にこの話題を取り上げるのは、勝利演説を読むたびに感動が高まってしまう状態では、ものを書く時にバイアスが掛かってしまうであろうことを自分で理解していたからです。気分的な高揚が収まるまで待つ必要がありました。私は政治家に過度な期待が禁物なのは、重々承知しています。そして、過度な期待の集合が危険であることも。
私は、共和党の予備選で党内ではリベラル派のマケインが早々に勝利し民主党ではヒラリーとオバマが接戦を繰り広げ3人に絞られた時点で、これでジョージ・W・ブッシュの8年のような時代から、おさらば出来る、と安堵したものです。それでも、一番期待していたのは、バラク・オバマでした。祖母がケニアに住んでいる彼の当選は、アメリカの成熟した民主主義の底力を感じさせました(日本の首相を始めとする2世議員が閣僚の大部分をずらりと占める硬直した状況と比較すればコントラストがよりくっきりします)。彼が勝利演説で言った「この国の民主主義の力を未だに疑う人がいるなら、今晩こそがその人たちへの答だ」は、ここ数年あらゆる局面で疑念を抱いていた私に返す言葉を与えませんでした。
新大統領は、2004年の民主党大会の基調演説における、歴史的名演説「ただ一つのアメリカ」の時から比べても、(話の内容、表情から立ち居振る舞い言葉の抑揚にいたるまで)すごいレベルで成長を続けた事がわかります。そして、大統領に駆け上がる道程でのタフな選挙戦の中で終始、冷静で落ち着いていましたし、しっかりと準備していました。
それに比べ、声高に「私は準備が出来ている!」が口癖だった共和党副大統領候補サラ・ペイリンは、ブッシュ・ドクトリンについて何も知らなかったという副大統領になろうとする意思を持つ人間にとっては許されない致命的な無知により、何一つとして準備出来ていなかった事を露呈しました。あたり前の事ですが、その知識レベルの彼女が公の場で、対立する大統領候補をテロリスト呼ばわりするような資格はなかったですし、そもそもテロリストを正確に定義出来ていたのか、疑問です。
しかし、当の大統領候補本人達、オバマとマケインの戦いは昔から熾烈で手段を選ばないネガティブキャンペーンが自明であった大統領選でフェアプレーさえ感じさせ、正々堂々と戦っていました。これからして、新しい時代へのチェンジを感じさせました。
もちろん、バラク・オバマはまだ、アメリカ大統領としては何もしていません。そして、史上稀に見る困難な状況での就任となり、アフガンとイラクの2つ戦争、待ったなしの地球環境の問題、そして恐慌になってもおかしくない金融危機など、世界でもっともタフな仕事達が待っています。
当選後、G20に参加しなかったりと不人気でレイムダックの現ブッシュ政権と、恐ろしいくらい賢明な距離を取るしたたかなオバマは、シカゴの貧民街の社会福祉活動家出身の「理想を語るリベラリストの申し子」から「冷徹なリアリスト」に変貌する可能性は否めません。彼がマイノリティーであるがゆえです(男性以上に男性的だった鉄の女マーガレット・サッチャーみたいなものです)。自らの経済政策が失敗するとか(前政権からの負の遺産であるこの危機的状況を、一体誰が打開・克服しうるというのでしょうか?)状況によっては、政治的勝利のためには手段を選ばず、血の決断も辞さないかもしれません。
バラク “フセイン” オバマ。しかし、ミドルネームが、こう言っているように思えるのです。「目には目を、の憎しみの連鎖の時代は終わった。対話と融和と和解の時代の始まりだ。心の準備は出来てるか?世界の我々は出来るのか?」と。
気分的にではなく、一週間以上自分の内面としっかり向き合い地に足つけた今、慎重に謙虚に誠実にしかし力強くこう答えたい。
Yes,we canと。
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